5. 愛が形になる時
猫と暮らし始めてから、育てるだけ、見守るだけでは私は満足できなくなってきていた。こちら側から一方的に与えているだけになっているのではないか?と。
何かしらの方法で返事をもらえる方法がないのか、もしくは実は返事をもらえている気づかない行為がないか考えるようになっていた。
●体重測定
これは彼というよりは数値で返事をもらえていると考えられる。生後半年までは毎日100gずつくらい増えていた。生後10ヶ月にもなると安定してきて、今は4.3kgをキープしている。
●写真
これは一方的に自分が撮っている行為に見えるのだが、彼は明らかに写真を意識している瞬間がある。彼が可愛いポーズをしている時に、今から撮るぞ!カメラを構えると必ず静止してくれている。
●ぬいぐるみのおもちゃ
ミシンを使ってぬいぐるみを作り始めた。彼がどんなおもちゃを好きなのか研究したくなってきたからだ。特にこのおもちゃに関しては試行錯誤の連続だ。
最初は蹴って遊べるような大きさの「蹴りぐるみ」というものを作った。
中にはクシャクシャと音のなるすずらんテープと、鈴を一つ、そしてぽんぽこ綿。
体の大きさもしっかり測って、音の鳴るように工夫したのに、全然遊んでくれない。
魚のデザインがイマイチだったのか。
次に作ったのは小さな猫の形をしたぬいぐるみ。
ちょうど彼が咥えて持っていけるくらいのサイズ。
これはなぜかすぐに見つけて、イジメはじめた。
器用に前足でチョンチョンと突いて、机の上から落とし、
机の上に戻すとまた落とし…の繰り返し。
次に作ったのはまた魚のぬいぐるみ。
今度はサイズ感を一回り小さくして中身はシンプルにぽんぽこ綿だけにした。しかしこちらもあまり反応をくれず、一瞥した後にあとずさり、嫌なものを見るかのように近づかなくなった。
次は棒状のぬいぐるみに蝶のようなぬいぐるみを合体させたもの。
ぬいぐるみの先にはリボンが付いていて、降るとリボンが空中を舞う仕組みになっている。
これはとっても好評だった。ついに求めていた反応が来た感じがした。
棒を振ると先に付いている蝶が揺れ、リボンはフワフワと舞う。その蝶に抱きつきながら噛み付いて戯れていた。相撲をとっているような動きで活発に遊んでくれた。
そしてある日、一人でお留守番させている時間が多いことに気がついた。
彼を寂しがらせてい Äb0るのではないかと思って、気がついてからすぐにお友達を作ることにした。
これらは宇宙から現れた猫型宇宙人で
それぞれに個性があり、基本的には 群れで行動している。
ある惑星の司令で猫の生活を観察し、
その実態を報告 Äb0する任務に当たっている。
しかし、この猫型宇宙人はみんな彼の猫パンチによって
制裁されてしまった。任務はなかなか遂行されない。
ぬいぐるみだけでは寂しい気持ちは埋まらないのかもしれない。
そうやって日々、衝動に駆られて制作を続けてきて、ふと、これらの形も私から溢れ出る「愛」そのものなのではないかと思うようになった。そしてそれを通して、可愛さや愛おしさを見る人 に共有できるのではないかと。
可愛いな、愛おしいなという気持ちは心をぽかぽかにする。私はいつも彼と一緒に生活をしていてとても幸せな気持ちでいっぱいだ。
もしこの気持ちを、愛おしさや可愛いという気持ちが誰かに伝わったらきっとその人も幸せにすることができるんじゃないかと思う。
絵を描いて、物を作って愛を表現する。
愛があるから絵が描けて、物を作ることができる。
そしてそこで生まれるものが、誰かをぽかぽかにすることができたら、私は最高に幸せだ。
一番愛を伝えたいのは、うちの猫「ぶし」だ。
本当に伝わっているかは私にはわからない。でも、一生懸命、彼が幸せになれるように私は尽 くすつもりだ。そして、そこから溢れ出す、愛おしさのパワーとか、可愛いという衝動をこれからも形にしていきたい。そういう愛の循環の中で、たくさんの幸せを形にして、伝えていきたいのだ。
いつか私は猫を描かなくなる日が来ると思う。たくさんの愛を描いていてそう感じる。私は生 まれた時から絵と共に生きてきた。これからもたくさんの物を作りながら生きていく。その中で色々な愛の形と、ぽかぽかする気持ちをずっと生み出していきたいと思っている。
(2021/01/24)